睡眠障害

睡眠薬の使用

2013/08/27更新

 厚生労働省が発表する「睡眠障害対処12の指針」では、睡眠薬の使用について、次のように記されています。

12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

・一定時刻に服用し就床
・アルコールとの併用をしない

 

現在の睡眠薬は安全です

 睡眠薬というと、中毒になったり、「睡眠薬自殺」を思い浮かべたり、のみ続けるとボケるといったイメージがある人もいるかもしれません。しかし、そのようなことは全くありません。昔の睡眠薬は、呼吸機能や循環機能を抑制する作用があったため、大量に飲むと死に至ることもありました。しかし、最近は呼吸機能や循環機能に影響のない睡眠薬の開発が進んでおり、こうした副作用は起こらなくなりました。
 昔の睡眠薬は脳全体の働きを低下させて眠らせていましたが、現在の睡眠薬は大脳の感情を安定させる神経に働きかけるものです。

 

睡眠薬の副作用で1番の問題は作用が残ってしまうこと

 朝起きた時に前日に飲んだ睡眠薬の作用が残っているという問題があります。作用が残っていると、朝起きられなくなったり、ボーっとして集中力や作業効率が低下したりします。しかし、現在では半減期(薬の効果が半分になるまでの時間)が短い薬が多く、そのタイプならほぼ問題ありません。

 

特に高齢者は注意が必要

 高齢者は代謝が悪く、薬の作用が残ることが多いので、ふらついて転倒するなんてこともあります。服用する時には注意しましょう。

 

医師の指示の下、正しく使えば安全

 「薬の量をどんどん増やさないと効かなくなるのではないか」「薬なしでは眠れなくなるのではないか」と心配する人もいます。しかし、医師の指示にしたがって、適正に使用すれば問題ありません。睡眠薬治療を受けた人の半数以上が睡眠薬なしで眠れるようになっています。

 

睡眠薬には作用時間の長さがある

 睡眠薬は作用時間によって4つのタイプに分かれます。症状に合わせて使い分けます。

タイプ 作用時間 特徴 商品名(一般名)
超短時間作用型 2〜4時間 主に入眠障害の治療に使います。作用は睡眠中にほとんど消えてしまいます。 ハルシオン(トリアゾラム)、アモバン(ゾピクロン)、マイスリー(ゾルピデム)
短時間作用型 5〜6時間 中途覚醒、熟眠障害の治療にも使います。翌朝には薬の作用はほとんど残りません。 レンドルミン(ブロチゾラム)、エバミール(ロルメタゼパム)、ロラメット(ロルメタゼパム)、リスミー(リルマザホン)
中間作用型 7〜8時間 熟眠障害、早朝覚醒の治療にも使います。 サイレース(フルニトラゼパム)、ロヒプノール(フルニトラゼパム)、エリミン(ニメタゼパム)、ユーロジン(エスタゾラム)、ネルボン(ニトラゼパム)、ベンザリン(ニトラゼパム)
長時間作用型 10〜12時間 熟眠障害、早朝覚醒の治療にも使います。夜眠れないために強ストレスや不安がある場合にも使います。 インスミン(フルラゼパム)、ダルメート(フルラゼパム)、ベノジール(フルラゼパム)、ソメリン(ハロキサゾラム)、ドラール(クアゼパム)

 

睡眠薬はきちんと飲む

 睡眠薬を飲んだり飲まなかったりしていると、不眠はなかなか改善できません。睡眠薬無しで眠れるようになるまでは、きちんと毎日飲むことが大切です。
 また、薬の量を間違えて多く飲んでしまったりすると、頭がボーっとしてしまったりするなど、副作用が強く現れてしまいます。医師の処方を守ってきちんと飲みましょう。

 

睡眠薬は寝る30〜40分前に飲む

 睡眠薬は効き始めるまでに30〜40分ほどかかるので、就寝時刻の30〜40分前に服用します。服用後、ふらつきが出ることがあるので、早めに床につきましょう。
 早く寝ようとして、普段の就寝時刻の2〜3時間前に飲んでも、効きにくいことがほとんどです。いつもの就寝時刻に合わせて服用しましょう。

 

アルコールと一緒に飲まない

 睡眠薬をアルコールと一緒に飲んだり、深酒をした後に飲んだりすると、ふらつきが出たり、記憶が飛んだり、異常行動を起こすことがあります。

 

睡眠薬をやめるときは必ず医師と相談

 睡眠薬は一生飲み続けるものではありません。睡眠薬の力を借りながら徐々に睡眠に対する不安やストレスがなくなって、睡眠薬なしに眠れる自信がついてきます。
 そうなったら、医師と相談しながら量を減らしていきます。1錠を1/2錠に、1/4錠にと段階的に減らしていったり、毎日飲んでいたのを1日おき、2日おきとしていったりします。

 

市販の「睡眠改善薬」の長期使用は避ける

 市販の睡眠改善薬の大半は抗ヒスタミン剤で、乗り物酔いの薬と同じ成分です。乗り物酔いの薬を飲むと眠くなりますが、その作用を逆手にとって開発されたものです。病院で処方される睡眠薬とは働きが違います。
 旅先で枕が変わって眠れない、騒音で眠れない、光がまぶしくて眠れないといった原因がはっきりした、症状のごく軽い一時的な不眠に対してなら、市販の睡眠改善薬を使うのもよいでしょう。しかし、慢性的な不眠の場合は、医療機関で受診し、処方された睡眠薬を服用するようにしましょう。

 

便秘だと睡眠薬の効きが悪くなる

 睡眠薬は腸で吸収され効き目が現れます。便秘ですと吸収効果が落ちて効き目が悪くなります。睡眠薬が効かないという方は、便秘にも気をつけてみましょう。

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